シドルムス世界誌西方編・第七時代529年版
SIDRUMS CODEX · WESTERN YOLWOOD

世界・自然・文明統合事典 / 西方ヨルウッド

シドルムス
世界誌

世界の成立、七時代の変遷、龍、マナ、人類種、ヨルウッド大陸、アティラ王国および周辺地域を収録した総合参照版。

基準年代
第七時代529年
主対象地域
ヨルウッド西方圏
記述方針
教会暦・王国法・自然誌を併記
歴史精度
第五時代以前は推定を含む
灰脊山脈を望む西方ヨルウッドの山岳景観
図版0|灰脊山脈西麓。中央山系は大陸の気候、交易、文化を東西に分ける。
I–01

世界概要

シドルムスとヨルウッドを理解するための基礎値。

シドルムスは、神々が去った後もマナが自然循環の一部として残る世界である。現在の主な文明段階は中世西方世界に相当し、火薬と蒸気機関は存在しない。鉄・青銅加工、河川水運、石造建築、薬草医学は発達しているが、印刷物、機械時計、硝子は高価である。

世界名
シドルムス
主要大陸
ヨルウッド
大陸面積
約900万km²
現代
第七時代529年
社会基盤
中世北欧〜中欧風
主力武器
剣・槍・弓・弩
識字
中流以上の都市民で60〜70%
魔法
実在する希少専門技術
高原の古代観測所から眺めたシドルムスの夜明け
FIELD PLATE第一時代のものと推定される西部高原の観測遺構。上空には自然マナの発光帯が見える。
I–02

四柱と創世

四神は火・水・土・風の所有者ではなく、世界存続に必要な四つの原理である。

四柱は共同で龍を創造した。龍は一柱だけの眷属ではなく、四神すべての力を内包する「四柱の器」である。神々に本来の性別はなく、人物像と性別は地域表現にすぎない。

衡冠座アウレクス秩序・誓約・尺度・法・統治・時間
詳細
アウレクスを表した四柱教会の神像
アウレクス標準図像・王立宗教誌院復元
尊称
天秤冠/境界の王/最初の裁定者
象徴
四角の天秤、閉じた金冠、鷹、白・金・濃紺
龍へ与えたもの
骨格、鱗、肉体の形、縄張り、世界法を認識する力
主な信徒
王族、貴族、裁判官、官吏、衛兵、測量師、石工、商人
祝祭
衡冠祭|7E暦の元日。秤、時計、貨幣原器を検査し、契約を更新する。
禁忌
偽証、境界石の移動、度量衡改竄、印章偽造、私刑
根炉座ティルメア生命・大地・誕生・家族・農耕・治療・労働
詳細
ティルメアを表した四柱教会の神像
ティルメア標準図像・王立宗教誌院復元
尊称
根と炉の母/土抱く者/傷を閉じる手
象徴
根を張る四葉、炉の円、麦穂、雌鹿、赤土・緑・茶
龍へ与えたもの
肉、血、成長、食欲、生殖能力、卵と幼体を守る執着
主な信徒
農民、牧畜民、産婆、薬師、料理人、織工、家族、農村の亜人
祝祭
初芽祭|春最初の新月後。種籾、農具、新生児、家畜を祝福する。
禁忌
食料の破壊、井戸への毒、子の遺棄、飢饉時の買占め、龍卵売買
深水座ネメリア水・記憶・死・歴史・夢・秘密・航海・埋葬
詳細
ネメリアを表した四柱教会の神像
ネメリア標準図像・王立宗教誌院復元
尊称
深き水の記録者/名を守る者/最後の聞き手
象徴
水面の目、黒い器と一滴、螺旋、白い魚、黒・銀・深青
龍へ与えたもの
魂、記憶、知性、感情、長寿、過去を語り継ぐ力
主な信徒
葬儀人、墓守、書記、歴史家、図書館員、船乗り、遺跡研究者
祝祭
万名夜|冬至。死者の名を水盆へ読み上げ、身元不明者のため沈黙する。
禁忌
墓荒らし、死者名の抹消、河川汚染、歴史改竄、強制的な蘇生
翼火座ヴァルカエル風・火・変化・移動・発見・言語・魔法・自由意志
詳細
ヴァルカエルを表した四柱教会の神像
ヴァルカエル標準図像・王立宗教誌院復元
尊称
翼ある火/最初の息/鍵を持たぬ神
象徴
翼間の炎、開いた螺旋、鍵穴のない扉、渡り鳥、赤・紫・灰白
龍へ与えたもの
翼、呼吸、咆哮、属性、言語理解、体内を巡る自然魔力
主な信徒
旅人、鍛冶師、学者、発明家、詩人、通訳、魔術師、移住亜人
祝祭
放翼祭|初夏。紙翼を塔から飛ばし、新発見、地図、詩、魔法理論を公表する。
禁忌
知識の断絶、偽道案内、意思の魔法的剥奪、放火、才能の種族否定
01四原理

境界・生命・記憶・変化

02マナ循環

世界へ残る神の力

03原初龍

均衡を守る四柱の器

04神々の退去

理由不明・中央の空座

II

七時代年表

第二時代開始から現在まで約7,429年。第一時代の長さは不明。各時代の改元により年数はリセットされる。

I不明II3,000III500IV800V2,000VI600VII529
七時代の遺構が同じ土地に重なる景観
FIELD PLATE巨石、龍時代の遺跡、灰戦の荒地、現代都市が重なる中央西部の歴史景観復元。
I

神の時代

ディヴィニタス・エラ
継続年数不明開閉

四柱が世界へ直接顕現し、世界の規則と生命の循環を整えた先史時代。時間そのものが現在と同じ速度で流れていたかも判明していない。

  1. 四柱の顕現

    アウレクス、ティルメア、ネメリア、ヴァルカエルがシドルムスに現れ、境界・生命・記憶・変化の四原理を定める。

  2. 海陸とマナ循環の確立

    神々から生じた力が大気、水、岩盤、生物を巡り始める。後世、この循環力はマナと呼ばれた。

  3. 原初龍の創造

    四柱が骨、血、魂、息を分け与え、世界の均衡を監視する神造知性種として龍を作る。

  4. 世界法の固定

    龍が気候、地脈、海流、マナ溜まりを巡回する一方、自然現象から上位精霊が生じ、土地や物へ根を張ったスピリットが下位精霊として確立し始める。

  5. 神々の退去

    四柱は理由を告げず世界から姿を消す。中央を空ける四神教会の建築は、この不在を象徴する。

II

龍と精霊の時代

ドラコニア・エラ
約3,000年開閉

龍が世界法を維持し、上位精霊と下位精霊が自然の各所へ現れた時代。後半には土から立ち上がった原人類テルシアが各地で増え、人類種へ分化した。

  1. 四方巡環の開始

    原初龍が大陸を分割して巡回する。灰脊山脈は西方と東方を分ける最大の均衡線となる。

  2. 二系統の観測

    土地に縛られず自然現象として移動する上位精霊と、土地・物・反復現象へ根を張る下位精霊の違いが龍文字記録に現れる。

  3. テルシアの出現

    一介の土の塊であった種族が龍の一側面を模して二本足で立ち上がった、と龍文字断片は記す。

  4. 人類種の分化

    環境と精霊的影響によって、人間、エルフ、獣人、その他の人類種が緩やかに分かれる。

  5. 根の大移動

    人類の土地利用によって多くの下位精霊が依代を失い、別の土地や道具へ根を移すか休眠した。上位精霊の活動域は人類圏を越えて続いた。

III

龍の時代

コンコルディア・エラ
約500年開閉

龍と人類種が最も密接に交流した文明黎明期。龍から文字、測量、建築、天文学、医術が伝えられ、最初の都市群が成立した。

  1. 灰脊盟会

    十三頭の龍と西方の七共同体が、水場と狩場を分ける最初の記録契約を結ぶ。

  2. 龍文字の授与

    音ではなく関係と変化を記す龍文字が、人間向けの表音・表意混合文字へ簡略化される。

  3. 第一石橋群

    洪水に耐える迫石、尺度、星による方位測定が普及し、河川交易と定住都市が拡大する。

  4. 七学堂の時代

    医学、暦学、建築、記録、薬学、音律、地理を教える学堂が各地に作られる。

  5. 龍の退避

    人類の技術的自立とともに交流が減り、龍は山岳や辺境へ移る。知性と力の緩慢な衰退もこの頃から記録される。

IV

英雄の時代

オーレア・エラ
約800年開閉

複数の帝国が均衡し、学術と魔法技術が頂点に達した黄金時代。現代の遺跡、人工魔獣、失われた術式の多くはこの時代に由来する。

  1. 九冠暦の制定

    西方と東方の九王国が共通暦、度量衡、使節保護を定め、大陸交易が安定する。

  2. 魔脈理論の体系化

    マナと個体魔力の違い、吸収・変換・保持・構築・導出の五段階が学術的に記述される。

  3. 浮橋都市群の完成

    符術と建築を組み合わせた巨大都市、長距離水路、気候調整塔が建造される。

  4. 英雄王戦役

    小国連合が魔術覇権国を破り、個人の武勇と術式が伝説化する。後世の英雄譚の原型。

  5. 灰冠競争

    各帝国が龍の身体構造を模した兵器と人工魔獣を開発。マナ溜まりの独占を巡る代理戦争が続く。

  6. 黒い昼

    大規模な地脈切断術が失敗し、三日間にわたり空が灰で覆われる。翌年、全面戦争へ移行する。

V

灰の戦争

キャタクリズマ・エラ
約2,000年開閉

魔術兵器、疫病、飢饉、国家崩壊が連鎖した大陸規模の暗黒期。二千年は一つの戦争ではなく、短い休戦を挟んで破局が反復した総称である。

  1. 九冠同盟の崩壊

    共通暦と使節保護が破棄され、主要街道とマナ井を巡る全面戦争が始まる。

  2. 玻璃雨

    高空で破壊された術式構造体が融解し、西方平野へ硝子状の破片と汚染マナを降らせる。

  3. 第一記録喪失

    写本院と年代庫が意図的に焼かれ、敵国の正統性と魔術知識を消す戦争が始まる。

  4. 灰脊断層戦

    山中の地脈兵器により峠と河道が変化。銅梯谷の地下境界問題は現代まで尾を引く。

  5. 無冠の百年

    大陸規模の王権が消滅し、城塞都市、修道院、地下集落だけが人口を維持する。

  6. 人工獣の離散

    兵器として作られた生物が野生化。現代の灰戦変異型・人工型魔獣の祖先となる。

  7. 灰の静止

    交戦勢力が兵力、食料、術者、記録のすべてを失い、講和条約すら結ばれないまま戦争が終わる。

VI

再建の時代

レナスケンティア・エラ
約600年開閉

生存共同体が村、都市、国家へ再編された時代。現代の宗教組織、種族分類、国境、爵位、ギルド制度の大半はこの時代に成立した。

  1. 根炉の誓い

    十二の農村と三修道院が種籾、井戸、孤児を共同で守る盟約を結び、再建暦の起点となる。

  2. 深水院の回収令

    各地の聖職者が墓碑、歌、断片文書を収集。第五時代以前の歴史復元が始まる。

  3. 四分類戸籍

    徴税と土地管理のため、人間・エルフ・獣人・他亜人という行政分類が西方諸国へ広がる。

  4. 四柱公同教会の成立

    四つの座が単一教会に統合され、暦、婚姻、埋葬、教育、救貧を共同管理する。

  5. ウィド丘城の建設

    クロン川の七橋を監督する丘城が築かれ、後の王都ウィドシュタットの核となる。

  6. アティラ王冠盟約

    王央領、五大諸侯、四柱教会、特許都市が一冠の下に結ばれ、アティラ王国が成立する。

  7. 龍殺し登録令

    辺境防衛の象徴として龍殺しが王国公認職となる。実際の龍討伐より外交的威嚇の意味が強い。

  8. 五峠条約

    灰脊山脈の主要通路と現代国境が承認され、第七時代への改元が宣言される。

VII

人の時代

フマニタス・エラ
現在・529年開閉

人間国家が大陸中央部を支配する現代。大規模戦争はないが、鉱山境界、亜人の権利、教会内部の教義対立、龍の衰退が静かな不安を生んでいる。

  1. 人の時代宣言

    五峠条約と新暦が発効。人類が神々の不在を引き受ける時代だと宣言される。

  2. 南港特許状

    南部港湾都市が自治、関税、外国人居住区の権利を得て、アティラの外洋交易が拡大する。

  3. セヴラント統合

    東方諸冠統合セヴラント帝国が成立し、灰脊東側の十八属州を統合する。

  4. 銅梯谷事件

    地下坑道でアティラと帝国の鉱夫が衝突。地上国境と鉱脈の不一致が外交問題になる。

  5. ウィド大時計の完成

    王都の機械式大時計が公定時刻を示し、市場、門限、裁判、礼拝の時刻が統一される。

  6. 北羊丘陵飢饉

    根炉座と獣人共同体の共同救援が成功し、亜人保護法改正運動の契機となる。

  7. 現在

    国家間は概ね安定。獅子門峠の通商交渉、王位継承、龍の目撃増加が当年の主要問題。

III–01

四柱が直接創造した神造知性種。魔獣、人類種、精霊のいずれにも属さない。

灰脊山脈で観察された成龍
図版1|灰脊西麓の成龍。観測距離およそ740歩。

現代の推定個体数はヨルウッド全土で約500頭。通常は単独で広大な縄張りを持ち、生涯の繁殖回数は1〜3回、産卵数は1〜3個、孵化率も低い。知性と感情は高いが、すべての個体が人語を話すわけではない。

成体全長
10〜20m
形態
四肢二翼
石・金属級の硬度
寿命
推定500年以上
食性
肉食中心・鉱石や植物の例外あり
分布
灰脊、北冠高原、古東森林ほか
社会
単独性・強い縄張り
人化
原初の血が濃い個体のみ

身体と魔力

鱗と骨格

アウレクスの世界法を固定する器官。鱗は衝撃、熱、魔力の流れを分散し、通常武器による致命傷を困難にする。

龍心と魔脈

龍の全身は巨大な生体術式である。龍心は血液だけでなく自然マナを循環させ、呼吸器と咆哮器官へ送る。

属性

ワイバーン期の環境、食性、経験によって確定する。炎や氷だけでなく、霧、石、雷、植物、音などがある。

知性の衰退

第三時代末から一部個体で言語、記憶、判断力の低下が観察される。原因は神々の不在、血統希薄化、マナ環境変化など諸説。

成長段階

01ベビー孵化〜約2年

歩行もおぼつかず、鳴き声は『クルル』。親または最初に強く認識した存在へ刷り込む。

02ハッチリング約2〜12年

好奇心が強く何でも噛む。原初の血が濃い個体はこの段階から人化できる。

03ワイバーン約12〜60年

飛行と狩りを習得。周囲の環境、摂取物、経験によって属性が固定される重要期。

04ドラグーン約60年以降

自我と縄張りが確立した成龍。人語を理解する個体が現れ、繁殖可能になる。

05ドラゴンロード到達条件不明

古代にのみ記録される完全形態。翼の一払いで渓谷を生むとされ、現代には確認例がない。

龍害と討伐法

教会の公式見解では龍は「神聖だが不可侵ではない」。知性や本来の使命を失い、人里を継続して襲う個体は使命から外れた龍と認定される場合がある。合法的討伐には、被害記録、教会調査、領主の要請、衡冠座と根炉座の共同裁定、龍害特赦状が必要。

遺骸は討伐者の完全所有物にならない。心臓と眼は深水座が埋葬し、骨は教会が保管、鱗の一部は王国へ提出する。爪牙の加工には許可が必要。卵の売買と血液の魔術利用は禁止される。

III–02

マナと魔法

マナは環境中の力、魔力は生物がそれを個体用に変換したもの。両者は同義ではない。

森の水と植物を循環するマナを観測する学者
FIELD PLATEエルデン辺境で記録された地表マナ循環。発光は肉眼より長時間露光図版で明瞭になる。
01感知遊離マナを捉える
02吸収呼吸・皮膚・食事
03変換魔脈で個体化
04保持器へ安全に蓄える
05構築術式に形を与える
06導出現象として放つ

才能で決まる部分

  • マナへの感応力
  • 一定時間あたりの吸収量
  • 生来の保持容量
  • 共鳴しやすい現象

修練で変わる部分

  • 変換効率と消費量
  • 術式の構築精度
  • 魔脈と集中の安定
  • 暴発時の制御と停止

三系統

01

詠唱魔法

韻律を持つ言葉、呼吸、身振りによって術式をその場で構築する。応用範囲は広いが、安定使用まで通常十年以上を要し、声と集中を断たれると崩れる。

02

符術

紙、木、石、金属へ魔力経路を事前に固定する。習熟の浅い者でも起動できるが、一つの符は一用途で、多くは一回限り。印刷複製しても術者による充填が必要。

03

体質魔法

生まれつき魔脈が特定の術式を形成している者の能力。狭い現象を低消費で扱える一方、別分野への転用は難しく、遺伝規則も判明していない。

四つの限界

無から作れない

魔法は既存の物質、熱、運動、情報を変換・移動させる。恒久物質の無からの創造は不可能。

距離で減衰する

術者から離れるほど制御のための魔力消費が増える。視認できない場所への精密術式は極めて危険。

生体は抵抗する

生きた身体の魔脈は外部干渉を排斥する。治療は自己回復を補助できるが、欠損や死を完全に覆せない。

時間を戻せない

記憶や夢の読み取りは可能だが、過去改変、完全な蘇生、未来の確定観測は理論上も否定される。

III–03

精霊

自然現象が意思と記憶を得た非肉体的存在。成立様式によって上位精霊と下位精霊へ大別される。

川面の流れに存在を示す精霊現象
FIELD PLATE広い水系を移動する現象は上位精霊の場合も、特定の川筋へ根を張った下位精霊の場合もある。
供物が置かれた共同炉と古い鉄鍋
FIELD PLATE共同炉は典型的な下位精霊の依代。供物と反復使用が根を安定させる。

精霊はマナそのものではなく、自然現象に連続した意思と記憶が成立した存在である。肉体や固定した種族形態を持たない。上位・下位という呼称は力や身分の上下ではなく、現象が単独で成立しているか、何らかの依代へ根を張って成立しているかを示す。

同じ「風」でも、季節とともに大陸を渡る風そのものが意思を持てば上位精霊となり、ある谷へ毎夕吹き込む風が土地の記憶を蓄えれば下位精霊となる。観測者には似た現象に見えるため、分類には移動範囲、根の有無、記憶の連続性を長期間調べる必要がある。

01自然現象・依代

土地、古木、道具、谷風、潮流など。

02スピリット

根を張り始めた不安定な意思。下位精霊に含む。

03下位精霊として確立

記憶と反応が連続し、独立した存在となる。

01

上位精霊

自然現象そのものに近く、場所や物へ縛られない

嵐、季節風、潮の満ち引き、山火事、雪解けなど、広域の自然現象が意思と連続した記憶を得た存在。依代を必要とせず自由に移動でき、第二時代から存続する個体も多い。『上位』は成立様式を示す分類で、下位精霊より強いことを意味しない。

知性
個体差が大きく、人類の尺度では測れない
現代の痕跡
長距離を移動する異常気象、同じ周期で帰還する霧や潮、複数地域に共通する古い呼び名として記録される。
02

下位精霊

土地・物・生物・反復現象など、依代となる根を持つ

特定の場所や物、あるいは根を張ることのできる概念・自然現象から成立する。たとえば風の下位精霊は『風そのもの』ではなく、ある谷や村に繰り返し吹いた風が記憶を得た存在である。根を失うと弱体化するが、条件が整えば別の依代へ移る場合もある。

知性
根の履歴と存続期間に応じて形成される
現代の痕跡
古木、井戸、共同炉、橋、家系道具、谷風、港の潮流などに宿る。供物や祭礼は根を安定させる働きを持つ。

他存在との区別

精霊とマナ

マナは循環する力で、精霊は自然現象に記憶と意思が成立した存在。水と魚ほど異なる。

上位と強さ

上位は依代なしで成立するという意味であり、戦闘力や知性の高さを示さない。小さな上位精霊が巨大な下位精霊より弱い場合もある。

精霊と魔獣

魔獣は肉体を持つ非知的生物。精霊は原則として肉体を持たず、繁殖や捕食を必要としない。

精霊と死者

死者の魂や残留記憶とは別物。人の記憶を模倣する精霊はいるが、本人が残ったものではない。

IV

人類種と行政分類

『人間』『亜人』は生物学ではなく、第五時代末から第六時代に作られた戸籍・徴税・土地制度上の区分である。

複数の人類種が行き交う西方都市の市場
FIELD PLATE南部港湾領の朝市。法的区分とは別に、港湾労働と交易では複数種族が日常的に協働する。

古代学説では大半の人類種は共通祖先テルシアから分化した。四神教会の保守教義は人間を完成種、亜人を土地・獣・精霊の影響を過剰に受けた傍系と説明するが、龍文字資料は「すべての人類種が龍の一側面を模倣した土から生じた」と読める。

HUM.01

人間

大陸74%・アティラ81%完全王国民
人間の民族誌標準肖像
人間・王立民族誌院標準図版
名称
人間/人族/正人/四神の民
平均寿命
55〜65年
身体・文化
無毛で丸い耳。地域差が大きく、環境への順応力と出生率が高い。魔法適性者の比率は低いが全系統が存在する。
法的地位
恒久土地所有、官職、軍指揮、ギルド親方、高位聖職、完全な証言権を制度上の標準として持つ。
ELF.02

エルフ

大陸7%・アティラ5%盟約臣民
エルフの民族誌標準肖像
エルフ・王立民族誌院標準図版
名称
エルフ
平均寿命
180〜230年
身体・文化
長い耳、細い骨格、優れた暗所視力と色彩識別。20歳頃から老化が緩慢になり、長期修練を要する詠唱術の習得率が高い。
法的地位
一部地域で土地所有可。薬師、写本師、測量師、森林管理人として重用されるが、高位聖職と貴族婚には壁がある。
BST.03

獣人

大陸12%・アティラ11%登録保護民
獣人の民族誌標準肖像
獣人・王立民族誌院標準図版
名称
獣人/土地と家々の名
平均寿命
45〜70年
身体・文化
耳、尾、体毛、瞳、爪、歯に犬相・狼相・猫相・兎相・熊相などの系相が現れる。同系相より家系と共同体を重視する。
法的地位
都市移住の保証人、夜間滞在、武器携帯、相続、証言、親方資格、婚姻に制限。軍では斥候、猟兵、荷役、坑夫へ配置されやすい。
DEM.04

他亜人

大陸7%・アティラ3%特別記帳民
他亜人の民族誌標準肖像
他亜人・王立民族誌院標準図版
名称
種族ごとに異なる
平均寿命
種族別
身体・文化
人間行政が少数種族を一括した便宜的分類。一つの生物種・文化圏ではない。
法的地位
居住、職業、戸籍、証言の規則は地方ごとに異なる。原名とは別に人間語の登録名を求められる場合が多い。

他亜人の主要五種

石膚人

ドロウム

灰脊高地

硬い灰褐色の皮膚と太い骨格。岩盤の亀裂を感じ、坑道都市と祖先信仰を持つ。アティラ・帝国双方の鉱山技術者。

鱗人

サーヴァ

南東湿地

細かな鱗、瞬膜、低い体温を持つ卵生人類種。塩田と運河に長け、龍との血縁を主張する。

河人

ネメル

大河・湖沼

首筋に補助鰓を持ち、舟上集落を形成。国家より水系共同体を重視し、河川輸送と漁業を担う。

灰眼人

イシュ

地下・古代遺跡

白灰色の皮膚と大きな黒眼。強光に弱く、廃墟から金属・硝子・文字板を回収する。厳格な所有概念を持つ。

翼腕人

アーヴァ

灰脊南部断崖

腕から脇腹へ皮膜を持ち、高所から滑空する。軽量織物、縄、吊橋の技術を持つ。

V

魔獣脅威等級

魔獣はマナを循環させ魔法現象を起こす非知的生物。種名ではなく、必要な対処戦力と予想被害によってI級からIV級に分類する。

魔獣通過後の地面を調査する王国の監視員
FIELD PLATE樹木損壊、足跡の魔力結晶化、行動範囲を測り、種名に先立って暫定等級を決める。
II級全登録の約62%

王国で確認される魔獣の大半。村の猟師や衛兵が現実に対処する標準脅威である。

I17%II62%III18%IV3%
I級低脅威17%

人へ積極的に危害を加えず、魔法現象も局所的。農地や家畜へ軽微な損害を与える場合のみ駆除対象となる。

標準対処
住民・猟師
II級標準脅威62%

魔獣の大半を占める等級。単独の成人には危険だが、習性を把握した数名と通常装備で対処できる。

標準対処
猟師・衛兵班
III級重大脅威18%

村、街道、鉱山へ継続被害を与え、強い縄張り現象を伴う。地方領主による討伐令と住民避難を要する。

標準対処
武装隊・専門猟団
IV級地域災害3%

城壁、集落、地形そのものを破壊し得る。軍事封鎖と広域避難を行い、王国龍害局にも記録を送る。龍は含まれない。

標準対処
軍・複数術士
自然適応型

高マナ地域で世代を重ね適応。

共生型

魔力菌・植物・寄生体と共生。

灰戦変異型

汚染や兵器により変異。

人工型

第四・第五時代に設計。

VI–01

ヨルウッド大陸地図

南北約3,800km、東西最大約3,100km。中央の灰脊山脈が西方圏と東方圏を分ける。

王立年代記院の地図制作机
FIELD PLATE沿岸測量、河川日誌、旅程記録を重ねて作られる王立年代記院の地誌原図。
VI–02

西方圏と周辺諸国

国境よりも、山脈、水系、港湾、森林盟約が生活圏を決める。

大河に面したセヴラント帝国皇都
FIELD PLATEセヴラント皇都イシュカラ。大河水運と官僚機構が広大な属州を結ぶ。
岩礁と船が密集するブレム海盟の港
FIELD PLATEブレム海盟の共同港。陸地ではなく航路と湾が都市間の距離を決める。
01

アティラ王国

西方の中規模王国 · 720万人

灰脊中央西側。農業、毛織物、陶器、南港交易、東部鉱山を基盤とする本誌の中心地域。

本誌のアティラ項目を見る ↓
02

セヴラント大帝国

東方諸冠統合帝国 · 4,300万人

18属州、6保護領、12直属都市。種族ではなく帝国への同化度と戸籍等級で住民を序列化する。

地図・詳細 +
地勢
灰脊東麓から大河盆地、古東森林、南東湿地までを含む大平原国家。属州間の距離は数か月に及ぶ。
統治
皇帝と帝国官僚院の下に旧王国・都市・遊牧領を属州として残す。帝国正民から無籍民まで五段階の戸籍等級を持つ。
経済
穀物、馬、鉄器、絹布、河川関税。大河水運と駅伝路が帝国を結ぶ。
現状と対立
獅子門峠の関税と銅梯谷の地下鉱脈を巡りアティラと対立。東方草海への実効支配は弱い。

主要都市・地域

  1. イシュカラ皇都・官僚院
  2. ヴァルドロフ西方軍都
  3. ミレザ大河商都
  4. ソルカーン南方塩市
  5. ノヴィル古東森林門
03

ブレム海盟

七港湾都市の海上同盟 · 約190万人

船舶、塩魚、琥珀、鯨油。王を持たず、種族より財産と船舶持分を重視する。

地図・詳細 +
地勢
岩礁の多い冷たい内海と複雑な湾岸。冬季には北港が結氷するが、南の深水港は通年利用できる。
統治
七都市の評議会が船数に応じて票を持つ。盟主は三年交代で、常備軍の代わりに共同艦隊を維持する。
経済
造船、海運、塩漬け魚、琥珀、鯨油、海上保険。獣人船員は多いが船主資格には財産要件がある。
現状と対立
海賊対策ではアティラと協力する一方、南港の関税引下げを要求。スケル諸島とは漁場線を争う。

主要都市・地域

  1. ブレメンハーフ盟会都市
  2. ノルドケイ北氷海港
  3. アンバーヴィク琥珀市場
  4. ザルツェン製塩港
  5. ヴァル港共同艦隊基地
04

メルガリア連合公国

五公国の連合 · 約310万人

温暖な葡萄畑、陶器、染料、果実。四神教会の権威が強く、獣人規制はアティラより厳しい。

地図・詳細 +
地勢
碧海沿岸の温暖な丘陵と河谷。北側の石灰岩台地がアティラとの緩衝地帯になる。
統治
五公が輪番議長を務める連合会議。外交と沿岸防衛のみ共同で、法と貨幣は公国ごとに異なる。
経済
葡萄酒、果実、陶器、紫染料、硝子。アティラの穀物とブレムの海運へ依存する。
現状と対立
公家間の婚姻競争が激しく、四柱教会の大司教座が調停者。獣人の越境逃亡が外交問題となる。

主要都市・地域

  1. メルガルダ連合会議都市
  2. ヴィニェラ葡萄酒都
  3. カエルム大司教座
  4. ポルティア碧海港
  5. ルブラ染料・陶器市
05

西岸諸侯領

侯国・伯領・自由都市群 · 約460万人

灰戦以前の城塞と街道が残る。人間領の間にエルフ森林領と獣人自由村が飛び地として存在する。

地図・詳細 +
地勢
断崖海岸、湿潤平野、旧街道沿いの丘城が入り組む。統一国境はなく、関所が短い間隔で続く。
統治
七侯、二十余伯、自由都市、修道院領が重層的な契約で結ばれる。全域を代表する常設政府はない。
経済
通行税、古城石材、染織、傭兵、沿岸交易。貨幣と度量衡が領ごとに異なり両替商が発達。
現状と対立
継承争いと飛び地紛争が絶えない。アティラ・ブレム・メルガリアがそれぞれ友好諸侯を支援する。

主要都市・地域

  1. グライフェン最大自由都市
  2. カステラ七侯会合地
  3. オルト湾西岸交易港
  4. アルトシュタイン灰戦遺跡市
  5. ローテン橋街道関門
06

エルデン森林盟約領

十三共同体と四都市の盟約 · 約88万人

アティラ王は領有を主張するが、徴税と伐採は限定的。王国法とエルフ慣習法の緩衝地帯。

地図・詳細 +
地勢
大陸西北の原生林。河川、樹冠、季節移動路が境界で、人間の直線的な地図と一致しない。
統治
十三のエルフ共同体と四つの人間都市が水・道・伐採を盟約で共同管理。議決には双方の承認が必要。
経済
薬草、樹脂、蜜蝋、精密木工、測量、写本。伐採量は樹齢台帳によって厳しく制限される。
現状と対立
アティラの森林領有宣言を認めず、徴税は街道沿いに限定。違法伐採者と旧遺跡探索者が問題となる。

主要都市・地域

  1. エルデン環盟約会合地
  2. リースハイン最大樹上集落
  3. ヴァルト門対アティラ交易市
  4. ミスト河港河川集散地
  5. オークレン人間自由都市
07

スケル諸島王国

北西沖の島嶼王国 · 約42万人

漁業、羊毛、鉄砂。労働力不足のため獣人にも土地所有と軍務が認められる。

地図・詳細 +
地勢
火山性の主島と百余の岩島。樹木が少なく、強風、海霧、短い夏が暮らしを規定する。
統治
島王と船長会議の二重統治。土地より船と放牧権が相続の中心で、沿岸村には強い自治がある。
経済
漁業、羊毛、鉄砂、海鳥油、北方航路の水先案内。穀物と木材はほぼ輸入。
現状と対立
ブレムとの漁場境界、王位継承、冬季食料が恒常問題。獣人の軍務参加は身分上昇につながっている。

主要都市・地域

  1. スケルホルム王都・冬港
  2. 鉄砂浜鍛冶集落
  3. フロスト湾北方漁港
  4. 羊角島牧畜中心地
  5. 霧灯台外洋航路標
08

サーヴァ湿原諸邦

帝国南東の水域共同体 · 推定120万人

サーヴァ都市、ネメル水上集落、人間塩田都市が混在。水路が変わり続け、人間式国境が機能しない。

地図・詳細 +
地勢
大河三角州、葦海、浅い潟湖、季節島。雨期と乾期で陸路と集落位置が大きく変化する。
統治
サーヴァの水門都市、ネメルの水系会議、人間塩田市が個別盟約を結ぶ。形式上は帝国保護領。
経済
塩、葦紙、魚油、舟運、薬用泥、真珠。水路案内人なしでは帝国軍も進軍できない。
現状と対立
帝国の固定税と変動する土地が両立しない。上流の治水工事が漁場と塩分濃度を変え、抗議が続く。

主要都市・地域

  1. サル=ヴァシュサーヴァ水門都
  2. ネメル環港水系会議
  3. 白塩市人間塩田都市
  4. 葦舟市季節市場
  5. 三流門帝国税関

第七時代529年の主要関係

アティラ ↔ セヴラント

国力差は大きいが灰脊が天然防壁。獅子門通商と銅梯谷の地下鉱脈を巡り、交渉と小競り合いが続く。

アティラ ↔ エルデン

王は森林全体の領有を主張するが実効支配は弱い。木材、薬草、測量技術と引き換えに自治を黙認する。

アティラ ↔ 南部諸国

メルガリアとは競合しつつ婚姻・陶器交易が盛ん。南港は王国の関税収入と国外情報の主要入口。

VII

アティラ王国

灰脊山脈中央西側の中規模王国。世襲王政、身分制議会、四神教国教制を併せ持つ。

クロン川と穀倉地帯、東方の灰脊山脈
FIELD PLATE南クロン平野から王央領を望む。灰脊山脈は王国東端だけに現れ、中央部は河川平野と丘陵である。

国王、貴族、教会、特許都市が権限を分け合う封建王国。王権は強いが絶対ではなく、恒久新税と長期戦争には三身分会議、戴冠と戸籍には教会、地方徴募には五大公爵家の協力が必要である。

正式名
アティラ王国
首都
ウィドシュタット
面積
約31万km²
人口
約720万人
国教
ヨルウッド四柱公同教会
通貨
金冠・銀秤・銅葉
軍制
王軍・諸侯軍・都市民兵
現王朝
ヴァレンシュタイン朝(6E 441〜)
クロン川と王城を望むアティラ王都
図版4|王都ウィドシュタットとクロン川。

六地方

1

王央領

ウィドシュタットとクロン川中流

穀倉、行政、織物、出版の中心。人間比率が高く、人間中心主義も最も強い。

地図・詳細 +
地勢
クロン川の緩い丘陵と沖積平野。王都から放射状に王道が延び、七橋が東西交通を集約する。
産業
行政、毛織物仕上げ、製本、河川市場、近郊穀作。
住民
人間約91%。都市外縁に獣人職工、川港にネメル船頭が居住。
主要問題
王位継承と食料価格、下市街の過密、亜人戸籍の不備。

主要都市・地域

  1. ウィドシュタット王都
  2. ロウェンダル南街道宿場
  3. クロイツ橋上流関門
  4. ハルツ穀市王領穀倉
  5. 聖衡原戴冠巡礼地
2

東部鉱山伯領

灰脊山脈西麓

鉄、銅、少量の銀。ドロウムと獣人坑夫が多く、帝国との地下境界が未確定。

地図・詳細 +
地勢
急峻な西麓、針葉樹谷、坑道都市。雪解け期には落石と鉄色の洪水が起こる。
産業
鉄、銅、銀、木炭、鍛造工具。王国貨幣の金属供給を担う。
住民
人間約61%、獣人18%、ドロウム16%、その他5%。坑道内では共同体法が優先される。
主要問題
銅梯谷の地下境界、坑夫の債務拘束、龍の営巣地と新鉱脈の重複。

主要都市・地域

  1. アイゼンブルク鉱山伯府
  2. ドロム=カル坑道都市
  3. 銅梯口帝国境界
  4. 黒炉村精錬中心地
  5. 白角砦冬季峠守備
3

北羊丘陵

王国北部の冷涼な牧草地

羊毛の主要産地。犬相、羊相、山羊相の獣人集落が点在する。

地図・詳細 +
地勢
風の強い起伏地、泥炭湿地、低い石垣で区切られた共同放牧地。
産業
羊毛、羊皮紙、乳酪、泥炭、牧羊犬。王都の織物産業を支える。
住民
人間と獣人の混住。獣人共同体は季節放牧路を土地所有より重視する。
主要問題
囲い込みによる放牧路消失、ブレム商人の羊毛買占め、冬季飢饉。

主要都市・地域

  1. ヴォル丘北丘公府
  2. 羊鐘市毛織物集散地
  3. グラウ湿原泥炭地
  4. 北柵村獣人共同村
  5. 風見砦北道守備
4

エルデン辺境

西部大森林との境界

エルフと人間の混住地。王国法と森林盟約の慣習法が併存する。

地図・詳細 +
地勢
耕地と原生林が指状に入り組む。道は季節と伐採許可によって変わる。
産業
薬草、蜂蜜、木工、樹脂、狩猟、森林測量。
住民
人間約62%、エルフ31%、獣人5%、その他2%。二言語の契約書が一般的。
主要問題
王国の領有宣言、違法伐採、森林法と領主狩猟権の衝突。

主要都市・地域

  1. ヴァルト門辺境伯府
  2. 白樺環エルフ集会地
  3. 蜜樹市薬草市場
  4. 古鹿道共同巡礼路
  5. 西柵砦森林境界
5

南クロン平野

クロン川下流の農業地帯

小麦、豆、亜麻を生産し、川船で王都と南部港へ輸送する。

地図・詳細 +
地勢
洪水で肥沃化する広い沖積平野。堤防、用水路、共同水車が密集する。
産業
小麦、豆、亜麻、粉、油、川船輸送。王国人口を養う最大穀倉。
住民
人間農民が多数。獣人の季節労働者とネメルの船運共同体が河岸に暮らす。
主要問題
堤防維持税、大地主の集積、凶作時の穀物輸出規制。

主要都市・地域

  1. コルンハイム穀倉公府
  2. 水車列市製粉中心地
  3. 亜麻原織物原料地
  4. 双堤港河川積替港
  5. 南穂村最大農村
6

南部港湾領

碧海沿岸の特許都市群

半自治の交易港。毛織物・陶器・穀物を輸出し、香辛料・硝子・染料・紙を輸入する。

地図・詳細 +
地勢
クロン河口の三角州と碧海の天然湾。湿地堤防と石造埠頭が海岸線を形作る。
産業
海運、関税、造船、陶器、倉庫業、外国品の再輸出。
住民
大陸で最も多種族・多言語。人間中心法は残るが、港湾実務では技能が優先される。
主要問題
王税と都市自治の対立、密輸、ブレム商館の影響、河口浚渫費。

主要都市・地域

  1. クロネンハーフ最大海港
  2. ザンクト湾南港公府
  3. 陶工島窯業地区
  4. 硝子門外国商館区
  5. 河口鎖砦水路防衛

統治機構

国王

外交、軍、封土、鉱山、貨幣、最高裁定を掌握。戴冠には四座すべての代表が必要。

三身分会議

聖職者、貴族、特許都市で構成。恒久新税、長期戦争、貨幣改鋳を承認する。農民と亜人は直接代表を持たない。

五大公爵家

東山、森林、北丘、南港、穀倉を担う地方権力。徴募兵、下級裁判、街道維持の義務を負う。

四柱教会

戸籍、暦、教育、婚姻、埋葬、救貧、施療、契約認証を管理。王国の国教だが王権直属ではない。

特許都市

城壁、市場、ギルド、民兵、地方税の自治権を持つ。王へ直接納税し、領主の介入を制限する。

王立諸院

財務院、鉱山院、度量衡院、龍害局、民族誌院、年代記院。識字官僚と教会書記が実務を担う。

経済と技術

主要産業

  • 南クロン平野の小麦、豆、亜麻
  • 北羊丘陵の羊毛と毛織物
  • 東部の鉄、銅、少量の銀
  • 職人街の陶器、武具、製本
  • 南部港の中継・関税交易

希少・高価なもの

  • 紙と活版印刷物
  • 機械式時計と精密歯車
  • 透明度の高い硝子
  • 南方香辛料と鮮明な染料
  • 術式符、魔獣素材、龍由来品
VII–01

王都ウィドシュタット

クロン川と七つの石橋を中心に、丘上の王城から同心円状に広がる人口約18万の王都。

地勢と気候

ロウェンダルから北へ徒歩五日。東に灰脊の稜線を望む。曇天と雨が多く冬が長い。朝には川霧が下市街を覆い、薪と泥炭の煙が空気を霞ませる。夏は短く温和。冬は薄氷と凍結した石畳が交通を妨げる。

都市の感覚

大時計の鐘、市場、荷揚げ、車輪、聖歌。羊毛、染料、窯煙、川水、香辛料、湿った石と泥。夜間照明は蝋燭、油灯、松明だけで、貴族以外の移動はほぼ徒歩である。

01

上市街

丘上

王城、四神大聖堂、貴族屋敷、王立諸院。整備された石畳、給水槽、夜警を備える。

02

中市街

丘腹

裕福な商人、職人親方、ギルド会館、マルクト広場、大時計塔。三〜四階の石造建築が多い。

03

下市街

川沿い・外縁

職人、日雇い、貧民、移住亜人。木組み家屋と工房が密集し、霧と浸水、火災が問題となる。

04

川港区

クロン川両岸

穀物、羊毛、陶器、鉱石の荷揚げ場。倉庫、宿、秤所、税関、ネメル船頭の舟溜まりがある。

05

七橋

東西市街

中央の王橋が最古。橋ごとに通行税、露店、守護座が異なり、夜間には鎖で閉鎖される。

06

外壁村

城壁外

染色、皮革、陶窯、家畜市場など臭気や火を伴う産業が集まる。獣人居住区も多い。

主要施設

アティラ王城

丘頂の城塞兼政庁。王族居館、謁見棟、財務院、兵器庫、国璽庫を収める。

四神大聖堂

四入口と中央空座を持つ王国最大の聖堂。戴冠、国家葬、四座会議が行われる。

大時計塔

7E 318年完成。市場の開閉、城門、裁判、礼拝の公定時刻を統一した。

マルクト広場

週二回の大市と季節市。度量衡院の検査所、布告台、刑事裁判の公開席がある。

VIII–01

社会・身分・法

アティラの身分は爵位、都市権、土地への拘束、教会戸籍、種族分類が重なって決まる。

種族別の王国法上の地位

IX

ヨルウッド四柱公同教会

四神ごとに分離した宗教ではなく、一つの公同教会の内部に四つの専門座を置く。

中央空座と四つの礼拝区画を持つ四柱教会内部
FIELD PLATE四入口から中央空座へ至る標準的な四柱教会。中央にはいかなる神像も置かれない。
東・アウレクス
北・ティルメア
空座神々の不在
西・ネメリア
南・ヴァルカエル

教会は四入口を持つ正方形で、中央には像を置かない。中央の空白は神々の退去を表し、大聖堂ではその上の天井だけに翼を広げた龍が描かれる。龍像を床へ置き、神として礼拝することは禁止される。

衡冠座政治・裁判・王権

政治的に最強。人間中心主義を正当化する四性均衡説の中心だが、龍害の法的記録も厳格に要求する。

根炉座農村・医療・福祉

信徒数最大。施療院、孤児院、共同倉庫を運営し、亜人も同じ生命として保護すべきだと考える司祭が多い。

深水座戸籍・年代記・図書館

政治力は弱いが、教会が何を記憶し何を忘れるかを決める。古代文書への根拠を欠く四性均衡説には慎重。

翼火座魔法・翻訳・巡回布教

最小の座。種族より能力を重視し亜人司祭が最多。灰の戦争の魔術災害と結びつけられ他座から監視される。

組織と権限

司祭階級

  1. 侍祭
  2. 司祭
  3. 柱監
  4. 大柱監
  5. 四座総監

四名の総監からなる四座会議が教義、暦、任命、異端審査を管理。議長の公同首座は十二年ごとの調整役で、同じ座から二代連続選出できない。

アティラで管理するもの

  • 出生・婚姻・死亡・墓地
  • 初等教育と一部の図書館
  • 暦、祝祭日、公定記録
  • 孤児院、施療院、救貧院
  • 誓約、契約、戴冠の認証

王は司教候補を推薦できるが任命できず、教会は王を直接廃位できない。双方が互いの正統性を必要とする。

X

用語集

本誌で使用する固有語・制度語の簡易定義。

シドルムス
物語世界全体の名称。マナが自然循環の一部として存在する。
スピリット
土地・物・反復現象へ根を張り始めたが、まだ安定した意思と記憶を持たない精霊成立前の状態。分類上は下位精霊に含む。
テルシア
『土より立つもの』を意味する古代語。人間と亜人の共通祖先とされる原人類。
マナ
第一時代に神々から生じ、大気・水・土・生物を循環する環境中の力。
ヨルウッド
南北約3,800km、東西最大約3,100km、面積約900万km²の大陸。
灰脊山脈
現地名グラウリッペン。南北約2,600km。最高峰は天柱峰5,740m。
四性均衡説
人間だけが四神の性質を均等に持つとする第六時代の教説。人間中心主義の根拠。
獅子門峠
アティラとセヴラントを結ぶ最大の恒常街道。外交・交易・諜報の要衝。
精霊
自然現象が意思と記憶を持った非肉体的存在。場所に縛られない上位精霊と、依代へ根を張る下位精霊に大別される。
魔獣
マナを恒常的に循環させ、特定の魔法現象を起こす非知的生物。
魔脈
マナを吸収・変換・保持・導出する生体経路。解剖学的な血管とは異なる。
魔力
生物がマナを体内で変換し、個体に扱える形へ翻訳した力。
四柱が直接創造した神造知性種。魔獣でも人類種でもない。現存推定約500頭。
龍害特赦状
使命から外れた龍の討伐を教会法上認める文書。被害記録、調査、領主要請、二座共同裁定が必要。

編纂方針

本誌は第七時代529年時点の王立年代記院、四柱教会、王立民族誌院、鉱山院、龍害局の標準見解を統合した体裁を取る。歴史上の年代と事件名のうち原典で未確定の箇所は、既存設定と整合する年代記院補遺として再構成した。